激変する自動車産業の未来図 (2026/5/5)

 

 

現在、世界最大の自動車輸出国が中国であることを知る人は以外と少ないのではなかろうか?昨年の輸出台数でいえば、中国が約710万台1/、日本が約417万台2/、ドイツが約317万台3/であった。中国の今年の輸出は800万台を軽く超えるものと見られる。(図参照)

 

中国のこの急速な輸出拡大は、中国の電気自動車(EV)の圧倒的な技術力とコスト競争力、そして国内の過当競争と過剰生産能力がもたらした結果である。

 

先週、日本経済新聞が「北京自動車ショー現地解説 中西孝樹氏と占う「車強国」の行方」というタイトルでポッドキャストを配信していた。内容は今年の北京自動車ショーの会場の様子を特派員が中継したものであった。そこには、もはや日本のメーカーの存在感はなく、圧倒的な数の中国車の展示で埋め尽くされていた。

 

中国車が急速に発展した理由は彼らの圧倒的に早い開発スピードにある。日本や欧米の自動車メーカーは4年から7年で車をモデルチェンジするが、彼らは2年でそれをこなす。そもそも中国の自動車メーカーは車の概念を大きく変えてしまった。ハードウェアの自動車は単なるドンガラに過ぎず、それを制御するソフトウェアが車の性能を決める。つまりソフトウェア定義型自動車(SDV4/)である。今や技術競争の舞台は自動運転、そしてロボタクシーの実用化である。

 

中国には必要なソフトウェアを提供する企業が数多くあり、それらが産業のエコシステムを形成している。そこでは、ファーウェイ(華為)、シャオミー(小米集)、モメンンタ(北京初速度科技有限公司)、ホライズン・ロボティクス(地平線機器人)などの名がよく知られる。

 

EV制御に関わるソフトウェアやAIを使った自動運転の技術分野で、日本や欧米メーカーはもはや単独では中国に対抗できなくなった。その結果、トヨタや日産だけでなく、ドイツのフォルクスワーゲンやメルセデスベンツ、そして米国のGMやフォードも中国企業との連携を進める。

 

しかし、EVや自動運転の世界で既存の日米欧の自動車メーカーが中国企業と提携するといっても、彼らから貰うものはあっても、特段与えられるものはない。つまり、技術力で言えば、日米欧の自動車メーカーと中国メーカーとの力関係は完全に逆転してしまった。

 

将来を見通せば、どれだけの日米欧の自動車メーカーが生き残るのか全く分からない。テスラのイーロンマスクが2024年初頭の決算説明会で発した「もし貿易障壁がなければ、中国の自動車メーカーは世界のほとんどの他の自動車会社を打ち負かすだろう」という言葉は決して冗談ではなくなる。

 

自動車産業とは栄枯盛衰の歴史である。1960年代から今に至る世界の自動車産業の変遷を見れば、その間に産業構造が天と地がひっくり返るほど変わった事がよく分かる。1960年代、米国のビッグ3は圧倒的な存在であり、日本の自動車メーカーは海外ではほとんど存在感はなかった。ところが、排ガス規制や燃費規制により、ビッグ3はその地歩を失い、技術開発で優位した日本車が米国市場で確たる地位を築くようになった。英国に至っては、技術競争に劣後したことで自国の自動車メーカーは淘汰されてしまった5/。僅か半世紀の間の出来事である。

 

半世紀とは言わない。この10年ほどで自動車業界の地図は大きく変わるだろう。

 

 

 

 

 

/1     JETROビジネス短信 2026.1.26 https://www.jetro.go.jp/biznews/2026/01/a1b00299f5fbcff0.html

/2     日本自動車会議所 「自動車産業インフォメーション」 2026.2.2  https://www.aba-j.or.jp/info/industry/25748/

/3     German Association of Automotive Industry, Annual figures Exports            https://www.vda.de/en/news/facts-and-figures/annual-figures/exports

/4     Software Defined Vehicle

/5     ローバー、ジャガー、デイムラー、MG、オースチンなどのブランドは海外企業に買い取られるか、消滅した。超高級車のロールス・ロイスもBMWに買収された。