戦時体制に向かうプーチン政権 (2026/9/22)

 

 

ロシアがウクライナ侵略を開始して4年半が経過し、第二次世界大戦(独ソ戦)を超える長期戦になった。今や戦争は膠着状態にあり、ロシアは東部四州を完全制圧することが出来ず、毎月3万人ほどの死傷者を出し続ける1/。プーチンはその補充をどうするかに悩む。これまでのように大金を払って志願兵を募り続けられるのか、それが無理となれば徴兵に舵を切るのか、その判断は瀬戸際に近づいているのだろう。

 

開戦当初の「これは戦争ではない。特別軍事作戦である」という国内向けの都合のよい言葉は、もはや実態を伴わない。変わらぬ日常生活を過ごしていたモスクワやサンクスペテルスブルクの住民にとって、近隣の製油所や物流倉庫がドローン攻撃を受け、ガソリン給油制限が始まり、GPSが使えなくなるようになったことで、もはやこの戦争が人ごとではなくなった。次に徴兵されるのは自分達ではないか、という不安に駆られる。

 

プーチンが恐れることは一般市民の間に厭戦気分が蔓延することである。それを阻止するために着々と市民に対して戦時下であるという意識を植え付けようとする。一つは戦時教育であり、もう一つは政治的に軍事体制を整えることである。

 

前者で言えば、学校で軍事訓練を実施することであり、すでに幼稚園ですら軍事教育を始めている。これはイデオロギー教育ではなく、愛国心を鼓舞するものである。兵士を学校に派遣して、戦争を語り、ウクライナを支援する西欧を非難し、国を守るために立ち上がれと言う。まさに旧ソ連時代に行われた軍事的準備である。ただし、親たちがその通りと思うかどうかは別の話である。

 

後者の政治体制固めが、918日から20日に投票が行われた国会選挙である。もちろんこれは出来レースで、詐欺まがい、いや詐欺そのもの選挙である。政権は、事前に反プーチンあるいは戦争に反対する政党・政治家を選挙から排除した2/。それゆえにロシアの人々はこの選挙を「特別軍事作戦」になぞらえて「特別選挙作戦」と揶揄する。

 

プーチンの狙いは簡単明瞭、政治的に彼が国民に支持されていることを示したいだけである(喩えそれがインチキであっても、という括弧書き付きではあるが)。現在開票が進んでおり、プーチン政権与党の統一ロシア3/4分の3以上の議席を確保する見込みである。

 

これでプーチンは政治路線の修正を求められることはなくなった。しかし、中長期的に見れば、ロシアが力尽くでウクライナを屈服させるための戦争を継続できるのか、あるいは国民の不満が爆発し、政権を危うくするものとなるのか、それは分からない。

 

 

 

 

1/     CSIS(米戦略国際問題研究所)は202616月のロシア軍の月間死傷者を3万〜3.4万人と推計。[CSIS Jul. 1, 2026]

英国政府は2026年初頭のロシア軍の平均月間死傷者は3万人超、2025年平均は約3.5万人とする。[Gov.UK Apr. 30, 2026]

ウクライナ軍参謀本部は2026年に入った7ヵ月間で238,650人を失ったと発表。[krinform Aug. 2, 2026]

NATO事務総長は、202612月だけでロシア軍は約6.5万人の死傷者を出したが、それを独立検証することは困難と発言。[Reuters Feb. 23, 2026]

2/     ウクライナ侵攻に対してロシア国内で唯一公然と反戦や停戦を訴えるロシア統一民主党「ヤブロコ(Yabloko)」は国選から排除された。副党首のマクシム・クルグロフ(Maksim Kruglov)は6月に禁固7年に処せられ、国民に人気のあるレフ・シロスベルク(Lev Shlosberg)は817日に7年間の流刑が言い渡された。[The Economist Sep. 16th 2026]

3/     United Russia

 

 

 

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