海外展開に猛進する中国の自動車産業 (2026/9/11)
多くの日本人には、中国製の自動車といってもピンとこないし、二流品のイメージが付きまとう。せいぜい、国の強力な支援で電気自動車の生産に成功したくらいの理解がいいところだろう。そこには、日本では電気自動車に対する懐疑心が未だに強く、その結果普及率も極端に低いことから1/、中国の自動車メーカーの実力を見くびるという、ある種の偏見がある。あるいは日本の方が優れているという、根拠のない自尊心、あるいは幻想に基づくものなのかもしれない。
どっこい、中国の自動車メーカーの生産は既に世界の三割を占め、2025年には日本メーカーの生産台数を上回った2/。中国は自動車大国であり、とりわけ電気自動車(EV)についていえば、中国メーカーの技術力は日米欧のメーカーを凌駕する。
中国の自動車メーカーは急速に輸出を拡大し、その数は2026年に対前年比で四割を超え、1000万台になるとみられる。そこには、熾烈な過当競争に加え国内市場そのものが縮小3/した結果、余剰となった生産能力を輸出に振り向けたという事情がある。西欧市場に目を向ければ、中国メーカは今年第2四半期で11%のシェアを獲得し、日本のメーカーのそれを上回った。
圧倒的なコスト競争力を持つ中国メーカーの輸出攻勢に対して、欧米は高い関税をかけた4/。一方、中国メーカーはそれを避けるために海外生産に移行し、誘致に積極的な国に工場を立地した(インドネシア、カザフスタン、南アフリカ、エジプト、ブラジル、メキシコなど)。
EUの輸入規制を避けるため、中国メーカーは域内での生産も進めつつある。BYDはハンガリーに工場(年産30万台)を建て、操業を目前に控える。さらにBYDはトルコ工場の建設を延期したが、欧州市場を狙ってスペインかフランスの既存工場の買収を検討する。
操業を逸早く達成するために、稼働率の低い他社工場の一部を取り込む事も画策する。現在、欧州には200万台ほどの設備余剰がある。奇瑞汽車(Chery)は、この6月に日産自動車の英国サンダーランド工場の余剰設備を借りる契約を結んだ。吉利汽車(Geely)はフォードのスペインのバレンシア工場でEVの生産を決めた。上海汽車集団(SAIC)はスペインでの新工場の建設を計画し、小鵬汽車(Xpeng)は欧州での生産を探る。
欧州メーカーにとって、これは大きな脅威になる。中国メーカーは無駄を省いた経営手法、車の構成部品の少なさ、垂直統合による合理化された生産形態、そして規模の経済の追求が圧倒的な強みである。
もう一つの中国メーカーの強みはソフトウェア定義車(SDV5/)にある。日本や欧米のメーカーが数多くのマイクロプロセッサーを使って車を制御するのに対し、中国メーカーは全ての制御を一つのコンピューターに纏める。システムを一括制御することで、継続的に制御機能の更新が可能となる。つまり、スマートフォンのように、販売後もソフトウェアを書き換えることで、機能をアップデートし続けられる。このSDVの分野では、日本のメーカーは圧倒的に中国に遅れる6/。
さらに加えて、中国メーカーの新車開発の早さである。約2年で新車を設計し、欧米のメーカーの半分の期間でモデルチェンジを成し遂げる。いわゆる「チャイナ・スピード」である。
向こう5年を見通せば世界の自動車業界の地図は大きく変わるだろう。それは戦後からこれまでの自動車メーカーの栄枯盛衰を見れば容易に想像できる。今のトップ企業が10年先まで安泰でいられる世界ではない。
1/
バッテリーEV(BEV)とPプラグイン・ハイブリッド(HEV)の合計を電気自動車(EV)とすれば、2025年の各国・各地域における新車販売に占めるEVの比率は次のとおり。
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日本 |
3%未満,10万台強 |
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米国 |
10%弱 |
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EU |
約27%, BEVのみで17.4% |
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中国 |
約55% |
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世界 |
約25%,2000万台 |
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出所:IEA,
Global EV Outlook 2026 |
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2/
2025年の世界の普通車(Light Vehicle)の生産台数は約9000万台。うち、中国メーカーの生産台数は約2700万台。一方、日本メーカーの生産台数は約2500万台。[S&P Global Mobility; CarNewsChina.com Dec 30, 2025]
3/
2026年は対前年度比で10%の縮小。
4/
バイデン政権は中国製EVに100%の追加関税を掛けた。トランプ政権は全ての国から輸入する自動車に対して25%の関税を掛かけたので、中国製EVには計125%の関税が掛かる。一方、EUは中国製EVに対して通常の10%関税に加え、最大35.3%の追加関税を課した(つまり,合計で最大45.3%)。
5/
Software
Defined Vehicle
6/
SDVへの対応度は次のとおり。
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対応度 |
主な企業 |
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レベル5 |
NIO(中国) テスラ、リヴィアン(米) ボルボ(スウェーデン) |
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レベル4 |
理想、小鵬、小米(中国) BMW(独) |
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レベル3 |
吉林、BYD(中国) |
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レベル2 |
メルセデス(独) 現代自(韓) |
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レベル1 |
トヨタ、ホンダ、日産 |
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(注)無線通信、E/E(電気/電子)アーキテクチャー、OSなどに関する35項目をモデル毎に評価。 (出所)日本経済新聞電子版 2026/9/9 (原典)モビリティ・グローバル |
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