トランプ大統領のイラク攻撃に対する欧州の対応 (2026/3/5)

 

 

トランプ大統領のイラン攻撃について、日本のメディアの反応や大方の国民の見方は「国際法違反」であるというものである。それ自体は正論である。これは欧州各国にとっても同じである。

 

ただし、その正論をトランプに向かって突きつけ、対峙できるかといえばそう簡単な話ではない。欧州でいえば、大西洋を挟んだ両国間の関係をどう維持するのかと悩むことになる。一つは経済の結び付き、もう一つは安全保障、とりわけロシアの軍事的な脅威にどう対峙するか、いずれも欧州にとって死活的に重要である。

 

イラン攻撃が勃発した当初、フランスのマクロン大統領は国際法違反であると公的に非難した。スペインのベドロ・サンチェス首相は「大惨事」と言い、ロタおよびモロンの米軍基地の使用を認めなかった。英国のキア・スタマー首相も当初同様な対応をした。

 

これに対して、トランプ大統領はスペインを「ひどい同盟国」と批判し、「スペインとのすべての貿易を断つ」と発言した。英国に対しては、スタマーを「チャーチルじゃあるまいし」と一笑に付した。

 

最終的に英国は防衛目的に限定して米軍が基地を使用することを認め、自国の基地のあるキプロスに自国の軍艦を送った。結局、米国との特別な関係が壊れることを最大限に重視せざるを得なかった。フランスも同様に地中海に原子力空母を送った。

 

唯一、スペインが正論を持って米国に強硬な姿勢を取り続けられるのは、EU諸国に比べ貿易における対米依存度が相対的に低い1/からである。トランプ氏と諍いを起こしたところで、大した影響はない。

 

そもそも、トランプ氏の個性に説明は要らない。彼はこれまで欧州の同盟国を「左の意識高い系、意気地なし、平和ボケ」と侮蔑することを気にすらしてこなかった。経済でいえば相互関税2/を容赦なくかけ、NATOでいえば「お前達は防衛にもっと金を出せ3/」と、はっきりと言い切った。

 

国際政治は、正義感や意気込みだけでは動かせない。自国の経済や安全保障が無視できない。

 

日本の立場もそうならざるを得ない。高市首相は国会で共産党からの質問に対して、イラク攻撃について「我が国としてその法的評価をすることは差し控える」と答弁した4/。米国は日本の安全保障と貿易において最重要ともいえる地位を占める。否が応でも、それが日本が置かれている状況である。

 

世の中には、高市首相はもっとトランプ氏に対してはっきり「国際法違反」と言ったらどうだという声がある。言うのはスカッとして気分が良かろうが、そこにはその後どう落とし前を付けるのかという知恵が全くない。

 

正義というイデオロギーだけで、国際紛争は解決できない。文明は進歩し続けてきたが、世界秩序という面でみれば実は19世紀や20世紀初頭の状況とそれほど変わっていないのかもしれない。不条理の上で秩序のバランスが保たれていることは、否定できない現実である。

 

 

 

 

/1     EUと英国との貿易が主であり、2024年の米国の順位は輸出で6位、輸入5位。米国との貿易(財とサービス)はGDPの約4.4%に過ぎない。一方、ドイツやイタリアの対米貿易依存度はGDPの約10%である。(スペイン銀行 https://www.bde.es/wbe/en/noticias-eventos/blog/el-comercio-de-espana-con-estados-unidos-y-el-impacto-de-los-aranceles.html?utm_source=chatgpt.com

/2     最高裁が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税に違憲判決を出したが、トランプ大統領はすぐに1974年通商法122条に基づく10%追加関税を150日間限定で発動した。

/3     NATOのルッテ事務総長はオランダ・ハーグで開いた首脳会議において、トランプ氏の要求に応じて、加盟各国が防衛支出を現在の目標であるGDP2%から5%に大きく引き上げると約束した。(Reuters 2025/6/25

/4     毎日新聞 (2026/3/2) https://mainichi.jp/articles/20260302/k00/00m/010/191000c

 

 

 

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