石油に加え、イラン攻撃で止まる液化天然ガス供給 (2026/3/13)
米国のイラン攻撃で原油価格が高騰したことはご存じの通りである。そのあおりを受けて、元売り最大手のENEOSは昨日からガソリンの卸価格を26円/ℓ値上げすると発表した。近隣の給油所の販売価格を見ると190円/ℓくらいに上がっている。
石油価格の値上がりは庶民にとって身近に感じられるが、液化天然ガス(LNG)の値上がりも電気や都市ガス料金の形で庶民の懐に響いてくる。
日本は天然ガスの9割を輸入に頼っており、それは液化天然ガス(LNG)の形で輸送される。昨年の世界のLNGの取引量は約4億3200万トン1/で、カタールはその約2割を占める。そんなLNG大国のカタールはイランからプラントへの攻撃を受けたことで不可抗力宣言を出し、生産を停止してしまった。
カタールのLNGの主な輸出先は欧州のほかアジア市場が圧倒的で、取引相手の8割強を中国、日本、インド、韓国、パキスタンなどアジア地域が占める。因みに日本がカタールから輸入するLNGは全体の5.3%でそれほど大きな比率ではないものの、ホルムズ海峡を通るアラブ首長国連邦からのLNGを加えると年間約400万トン、全体の6.3%という数字になる2/。
何となく日本への影響は限定的とも思えそうだが、そう簡単な話では収まらない。カタールの生産量は年間7700万トン、一方、スポット市場の供給力は1億5000万トンしかない。そこにカタールから消えたLNGを求めてバイヤーが殺到し、言わずもがなスポット価格は高騰する。アジアのLNGスポット取引価格3/をみると、2月27日時点で10.725ドル/mmBtu4/だったものが、3月12日時点で16.090ドル/mmBtuまで上昇した。
そもそも短期的に供給余力があるわけではない。豪州は約90%で稼働しており、余力としては1000万トンしかない。米国も95%で稼働しており、やはり余力はない。ましてや、現在のLNG不足に対して、現在建設中のLNGプラントの運転開始が間に合うはずもない。
欧州はロシアがウクライナに侵攻したことで、ロシアからの天然ガス購入を止め、それを中東からのLNGで代替した。今、LNGが逼迫したからといって、ロシアの天然ガス購入を再開するという選択肢はない。日本とて状況はそれほど変わらない。ウクライナ侵攻後もサハリン2からのLNG購入は続いているが、購入量を増やすというわけにはいかない5/。
ホルムズ海峡の封鎖とイランの近隣国への攻撃がいつ終わるのか、誰にも予想が付かない。戦争終結は、トランプ大統領、イスラエルのネタニヤフ首相、そしてイランのモジタバ・ホメイニ師の三者がどう折り合いを付けるかにかかる。しかし、先は全く見えない。そもそもトランプ氏、何かをぶち壊すことは得意とするが、新たに創造することは極めて不得意である。今回のイラン攻撃も、出口を見据えて仕掛けた戦争ではない。
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JOGMEC,2026年2月エネルギー動向ブリーフィング「世界のガス・LNG市場の動向」 2026.2.19
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JETROビジネス短信 2026.3.12
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LNG
Japan/Korea Marker PLATTS Future取引
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British thermal unit (100万英国熱量単位)
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米国米財務省は2024年11月、ロシアの国営ガス企業「ガスプロム」傘下の大手銀行を含む複数の金融機関を制裁対象に加えた。日本との取引については、2026年6月18日まで取引の許可を延長した。ただし、ベッセント米財務長官は2025年10月、米ワシントンで会談した加藤財務相(当時)に対してロシアからのエネルギー輸入を停止するよう求めた。【読売新聞オンライン 2025.12.18】