選挙向け消費税減税の愚 (2025/5/13)

 

 

夏の参議院選挙を控え、野党は物価高対策として消費税減税を公約にしようとしている。これに対して、政府自民党は消費税減税は行わない方針を固めた。社会保障の代替財源を見つけるのが困難な上、物価高対策として適当でない事がその理由である1/

 

今の野党の消費税減税案は選挙目当ての大衆迎合策でしかない。(しかし、選挙公約としては受けるだろう。)

 

現在の消費税収は約25兆円。もし消費税のうち、食料品に係る8%の消費税をゼロにすれば、約5兆円の歳入欠損になる。立憲民主党は消費減税を1年間とするようであるが、1年後に再び税を上げることは実現不可能。それは、消費税を8%から10%に上げたときの大騒ぎを見れば明確である。

 

一方、歳出を見てみよう。厚生労働省の試算によれば、社会保障給付費は今年度の約140兆円から1950年度の約190億円に毎年3.3兆円ずつ増加する。代替財源の確保もなく消費税を下げることは夢でしかない。もし、歳入を減らすならば、歳出も下げる、つまり社会保障を含めた行政サービスを削るしかない。

 

れいわ新選組は代替財源として金持の所得税や法人税の強化で賄え、もし足りなければ国債を発行と言っているが、これはもはや空絵事でしかない。典型的なポプリズムである。

 

そもそも金持ちとはどのレベルを言うのだろう。消費税25兆円を所得税にかけるならば中所得層の税率も上げなければ代替できない(このあたりの計算は東京財団の森信茂樹氏の論文を読まれるが良い2/)。法人税の値上げや累進化は企業の海外逃避を促進するだけで、これは企業の追い出し税に他ならない。ましてやそんな日本に海外から投資が来るわけもない。産業の衰退、そして行き着く先は雇用の喪失、つまり失業率の増加を招くだけである。

 

では国債の発行。確かに日本国債の多くは国内で消化しているのでデフォルトはなかろうが、財政規律を無視した国債発行も金利の上昇を招くだけだ。そもそも、これ以上の国債の引き受け手がどこにいるのか疑問である。昨日の30年国債の利回りは2.86%にまで上がっている。行き着く先はインフレの加速。インフレで庶民が苦しいので消費税を減税し、国債で賄う。それが金利の上昇とさらなるインフレを誘発する。ブラックジョークとしては面白かろう。

 

税負担の問題は単純である。税を払いたくなければ、行政サービスは縮小し、各々が自立する。つまり小さな政府を目指す。これは米国共和党の伝統的な考え方である。

 

全てを政府に依存するのであれば、北欧並みに2025%の消費税と所得の半分くらいを税で取られることを覚悟するべきだろう。

 

 

 

1/     読売新聞オンライン(2025/5/9

2/     税・社会保障改革 れいわ新選組「消費税ゼロ」の実現可能性を探る- 連載コラム「税の交差点」第71 <https://www.tkfd.or.jp/research/detail.php?id=3323>

3/     https://nikkei225fut.jp/historical/bond/jp/30y

 

 

 

 

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