『[ルポ]秀和幡ヶ谷レジデンス』 栗田シメイ 20253月 毎日新聞出版

 

 

これは、住民がマンションの自治を取り戻すため、長期独裁体制を敷く理事会を相手に1200日に及ぶ闘争を繰り広げた記録である。

 

舞台となる幡ヶ谷レジデンスでは、25年にわたって理事長とその取り巻き(理事)らが理事会を牛耳り、とんでもないルールを住民に押し付けてきたというお話しから始まる。ちなみにネットでは、このマンションは「渋谷の北朝鮮」と揶揄された。

 

とんでもないルールとは、例えば▼平日17時以降の外来者は入館禁止(含む、ヘルパーや宅配業者)▼部屋を賃貸する場合、理事会が賃借人予定者を面接▼部屋を購入する場合も、購入希望者を面接▼ベランダで物干しすることは禁止▼風呂釜の取替はバランス型のみ、実質浴室工事は不可能▼転入・転出する場合、5000円の転出入料を徴収▼身内・知人が宿泊する場合も転入出費用を徴収▼引越の際、持ち込み品を検査▼・・・・・・・・・・・・となる。そして、マンションには54台の監視カメラが設置され、住民の行動は日々監視される。

 

マンションにお住まいの方ならお分かりと思うが、組合総会に出席する所有者は二〜三割くらいというのが相場だろう。さほど関心を持たない人は全てを議長に委任、さらには委任状すら出さない人も珍しくない。都心の好立地となれば、投資目的の所有者も多く、なおさら総会への関心は薄くなる。その結果、一部の人間が理事会に居座り、独裁体制を敷くという話は結構耳にする。

 

そんな独裁体制が出来上がると、それをひっくり返すことは容易ではない。全ては総会の議決で決まるので、横暴な理事会を罷免するには過半数の委任状を集めなければならない。と言っても、所有者であっても居住していない人、理事会の運営は気に入らないが、反対の矢面には立ちたくない人と事情は様々。戦うと言っても、組織作りは並大抵の苦労ではない。

 

この幡ヶ谷レジデンスほど酷くはないが、私が住んでいるマンションでも似たような話が起きた。▼駐車場契約で勤務先の車両を使うのであれば、それを証明するために源泉徴収票を提出▼17時以降の引越荷物の搬入は禁止▼部屋の売買で禁止事項を購入者に正しく伝えるため、管理組合が指定する不動産業者の利用を推奨▼・・・・・・・。

 

幡ヶ谷レジデンスで馬鹿げたルール作りや異常な管理がまかり通ったのは、古手の年寄り理事達が思い込みと独断で全てをゴリ押ししたからである。彼らはマンションの資産価値を保つには厳格な管理ルールが必要と言い張るが、渋谷の一等地でありながら相場の30%40%に値付けしても部屋がなかなか売れない悲惨な結果を招いた。不動産取引市場の評価は最低、だれも「渋谷の北朝鮮」になど住みたくはない。

 

人事ではない。マンションにお住まいの方は是非ともこの話を他山の石として頂きたい。

 

 

 

 

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