戦況膠着状態下でのロシア軍の死傷者 (2025/6/4)

 

 

5月に続き、62日にトルコのイスタンブールで2回目の停戦交渉が行われたが、僅か1時間で終わり、ウクライナとロシアは捕虜交換に同意するにとどまった。

 

これまで両国ともに仲介に入ったトランプ大統領の顔色を窺っていたが、停戦交渉が進まないことから、ロシアは523日から26日にかけて連続してウクライナ各地に大規模攻撃をしかけた。ロシアはウクライナがロシア側の条件を全て受け入れて全面降伏をしない限り停戦する意思のないことを示した。一方、トランプ大統領が停戦交渉に関心を失いつつある中で、ウクライナも2回目の停戦交渉前日にシベリアの空軍基地を大規模ドローン攻撃し、ロアシアに屈するつもりのないことを示した。停戦交渉は隘路に陥ったようにしか見えない。

 

ロシアはどれだけの犠牲を払ってこの戦争を続けるつもりなのだろう。ウクライナとロシアは共にこれまでの死傷者数を発表していないが、ロシアの方がウクライナに比べ数倍の死傷者数を出しているという推計はいろいろなところに出ている。

 

ロシアは兵隊の命を無視した波状攻撃を加えることでジワジワと戦線を進めてきた。その戦術が「肉挽き攻撃(meat-grinder attack)」と呼ばれるゆえんである。死者の数は2024年末で1650001/、その後の半年で9万人がさらに死亡したと見られる。負傷者と死亡者の比率は41と見られ、死傷者の数は恐らく100万人に及ぶだろう。現状で1日あたり1000名の死傷者を出し続けている。

 

この死傷者数はロシアが第二次大戦以降の戦争で被った被害の中で突出した数字である。ソ連時代のアフガン侵攻で被った死傷者数の10倍に当たる。これだけの死傷者を補いながら戦線を維持するには、毎月34万名の補充兵が必要である。それをどうやって募集するのだろうか。死亡した兵の家族から出る不満が爆発することはないのだろうか。

 

実はこの問題はそれほど国内で顕在化していない。補充兵は貧しい地域から集められており、募集兵には多くの報奨金が支払われる。サインボーナスは119万ルーブル(217万円)、年報は350520万ルーブル(639949万円)である2/。これは平均給与の5倍に当たる。もし戦死しても家族が手にする補償金は極めて大きな額である。募集の場には、自らの命と引き換えに家族の将来を見越して志願する中年の男達がいる。そして田舎の村では、死傷した際に支払われる補償金で新しい家を建てたり、車を買ったりする姿がある。

 

大都市に住むロシア人にすれば、「俺に替わって、募集兵が金と引き換えに戦場に行くならば、それでいいんじゃないの」である。

 

 

 

1/     Meduza, Russian independent media The Economist Jun 2nd 2025

2/     Elena Racheva, Russian former journalist who is now a researcher at Oxford University. The Economist Jun 2nd 2025

 

 

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