デービッド・アトキンソン 「インバウンドは移民への依存度を下げる」 (2025/10/28

 

今朝届いた東洋オンラインへのメルマガに、デービッド・アトキンソン1/氏の面白そうな意見を見つけた。彼の論点を纏めるとこんなところだ。

 

l  日本はインバウンドの誘致人数が世界第9位、収入(観光収入)ランキングが第8位であるが、1人あたり人当たりの消費額は4位と、質の高い消費を誘引している。

l  2025年で(推計すれば)、観光収入の経済波及効果は約20兆円、付加価値効果は約10兆円2/、雇用効果は200万人規模となる。

l  これは自動車産業の輸出額17.9兆円に次ぐ規模である。

 

これをもって、日本はインバウンド戦略の推進で「移民への依存度を下げる」ことができると、彼は主張する。具体数字として、約10兆円の外貨獲得が定住者に置き換えると約526万人の実習生の消費効果に相当するという数字をあげる。

 

しかし、「インバウンドが移民への依存度を下げる」というそのロジックは分かりにくいし、飛躍がある。なぜならば、インバウンドを増やして10兆円の外貨を稼いだとしても、それで526万人の外国人労働者が減らせる、いや、トランプ流に言えば、国外追放できるわけではない。

 

今や、外国人労働者(実質的な移民)は日本の社会を動かすためのマンパワーとし存在する。526万人の実習生がいなければ社会は動かない。つまり、外国人労働者の消費とインバウンドによる旅行収入を両天秤に掛けることはできない。

 

日本の高齢化率(65歳以上の人口が全体に占める割合)は約29.4%である。2050年には約 37.1%3/となる。この超高齢化社会において、不足する人手は海外からの移民に頼らざるを得ない。それは高度人材であれ、単純労働力であれ、同じである。

 

世の中には、AIやロボットで労働力が代替できるので移民は要らないと叫ぶ人は多いが、それは技術革新の速度とコストとの兼ね合いであり、多分に願望に過ぎない。そもそもAIやロボットは人の作業を補完する手段でしかない。省力化で人手が減らせるとしても、ゼロにはならない。もし、人間をすべて代替できるのであれば、人間の存在自体が不要である。それはつまり、AIとロボットが人類を滅ぼす映画「マトリックス」の世界だ。

 

振り返って私の目には、アトキンソン氏の意見に「インバウンドは日本のGDPにとって大きな貢献となる」、かつ「国際収支で見れば自動車輸出(貿易収支)に次ぐ旅行収入(サービス収支)である」というデータ分析以上のものは見当たらない。

 

 

 

 

 

1/     在日イギリス人の経営者。小西美術工藝社社長、一般社団法人社寺建造物美術保存技術協会代表理事。京都国際観光大使、二条城特別顧問、迎賓館アドバイザー。ゴールドマン・サックス元マネージング・ディレクター。三田証券株式会社元社外取締役。【ウィキペディア】

2/     観光庁による訪日外国人旅行者の日本国内での消費額(いわゆるインバウンド消費額)は2024年で81395億円なので、推計としてはそのくらいだろうか。

3/     国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(令和52023)年推計)」

 

 

 

 

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