ベネズエラ マドゥロ政権の崩壊 (2026/1/7)
トランプ大統領は反米左派の独裁政権に対して軍事行動を起こし、僅か数時間でマドゥロ大統領を夫人共々拘束し,米国に連れ帰った。
見事に錬られた軍事作戦 作戦では150機の航空機が20個所の目標を攻撃した。陸軍特殊部隊が大統領のいる安全施設を襲い、就寝中の夫妻を確保した。米軍は事前にマドゥロ大統領の日常行動を把握していた。それはベネズエラ軍や政権上層部に米軍に情報を流す者(内通者)がいたということだ。米軍は強襲する前に、施設の電源を落とし、マドゥロ大統領の逃げ道を断っていた1/。
ベネズエラ市民の受け止め方 一般市民にとって米軍の軍事作戦は驚きをもって迎えられた。どの程度の市民がマドゥロ支持で、どの程度が反マドゥロか、明確な数字はないが、マドゥロがこれまで市民を弾圧(レイプ、殺害、拷問など)してきたことを考えれば、政権崩壊を喜ぶ声は相当あっただろう。
ベネズエラ軍の動き 米軍はマドゥロ大統領の寝所を強襲した際に護衛の40名を殺害したと発表した。実は護衛の兵士の多くはキューバ兵であった。つまり、マドゥロの身辺はキューバ兵によって支えられていた1/。一方、ベネズエラ軍の実態はといえば、将軍の数は500名とも2000名とも推定され2/、非常に頭でっかちな組織である。将軍達のなかには麻薬組織に関連する者が数なからずいるといわれる。今後、これらの将軍達が内紛を起こす可能性は小さくない。
今後の政治の安定化 これには相当疑問がある。現状、ロドリゲス副大統領が暫定大統領に就任したが、彼女に何ができるかは未知数である。とりわけ、軍と麻薬組織をコントロールできるのかどうか全く分からない。将軍達がそれぞれに覇権を争うことになれば、内乱が起きる。そこに麻薬の利権が絡めば、まさにカオスの世界になる。
では、直ぐに次の大統領を選ぶ選挙が行われるかといえば、それはなかろう。トランプにベネズエラを民主国家に変えようという考えはない。力を持って国を統治して石油利権を確保すること、そして中国とロシアの権益を遮断することしか頭にない。
トランプの目論見の達成 目論見が外れるシナリオは十分ありうる。トランプは経済の立て直しを米国の石油会社による投資で行うというが、簡単な話ではない。ベネズエラには膨大な石油埋蔵量があるが、多くは重質油とタールサンドだ。開発コストは高く、半面リターンが小さく、投資回収に長期を要する。もし内乱になれば、とても投資できる環境ではない。
軍事的にもリスクを伴う。民主的な政権安定ではなく、力で国の安定を達成するには、米軍が長期的にベネズエラに関与する必要がある。それはかつてイラクで犯した失敗を彷彿させる。イラクで米国が費やした費用は直接的な軍事にだけで1兆ドル、退役軍人のその後のケア、後方費用を含めれば3兆ドルとも推定される3/。
もし米国がベネズエラで泥沼の内戦に巻き込まれることになれば、トランプ政権は持たない。
同盟国への影響 トランプは西半球における米国の権益を確保すると明言し、それをドンロウ主義4/と名付けた。東半球にある欧州と日本は米国の主たる関心から外れるという訳だ。既にトランプはNATOから距離を置いており、自分達の安全保障は自分達でやれと言う。これは日本にも当てはまるだろう。日本は日米安全保障条約で守られていると思っているが、トランプはそれを日本がただ乗りしていると考える。
高市首相は台湾有事にからめて「存立危機事態」という言葉を使ったが、そのような時、トランプが日本を守るかどうか分からない。彼にとって民主主義の価値より、取引の損得の方が重要である。中国が米国から大豆やその他農産物を買うから(つまり米中の貿易不均衡の解消)米国は台湾問題に口出しするなと言い出せば、トランプがその取引に応じても不思議はない。
今言えることは、戦後長きにわたって信じられてきた米国が世界の秩序を守るという考えは既に幻想に変わっている。
1/
The
Economist, The Economist - Donald Trump says America will “run” Venezuela. What happens now, Jan. 6, 2026 https://www.economist.com/insider/the-insider/donald-trump-says-the-america-will-run-venezuela-what-happens-now
3/
Wikipedia,
Financial cost of the Iraq War https://en.wikipedia.org/wiki/Financial_cost_of_the_Iraq_War?utm_source=chatgpt.com
4/
Donroe Doctrine