Co-Intelligence: Living and working with
AI, Ethan Mollick, April 2024, Penguin Publishing Group
邦訳が「これからのAI、正しい付き合い方と使い方」という題名で出ている。値段もそれほど変わらないので、訳本を選択しても良い。
筆者はペンシルベニア大学ウォートン校の教授、つまりビジネススクールの先生で、人工知能(AI1/)の技術専門家ではない。したがって、読者に情報技術の知識がなくとも、日々の仕事や生活の中でAIをどのように使うことが出来るのか、また人の能力強化にAIをどう使ったらよいのか、分かり易く説明してくれる。
そもそもAIは自ら思考したり、心を持ったりするわけではない。多言語モデルで動くChatGPTは、インターネット上にある情報(知識)を基に、人が入力した文章の次に来る言葉(文章)を確率的に推測するに過ぎない。それが、あたかも人と会話しているかの如く、問い掛けに対して答えを出してくれるのだから、確かに凄いことである。
人が書いた文章をより良い構成に直したり、アイデアを整理したりするには、AIの方が情報量が多いので優れている。教育分野でも、定型の基礎を教えるにはAIは向いている。
余り聞き慣れない「反転授業2/」という言葉がある。今までの授業はまず先生が教室で講義して、生徒は家で宿題をする。反転授業はまず家でオンライン講義を聴き、学校では先生の下で演習で問題を解く。従前の教育方法に比べ反転授業の方が生徒の能力が上がるという研究結果がある。この反転授業で、AIが講師として講義を行うことでより効果的な事業が出来るというのが、まさに人とAIとの共生である(まさに共同知能)。
人の能力は考え出すことにある。一方、AIの強みは圧倒的な量の情報を整理し、記憶することである。つまり、AIと協働することでより高い効率で能力強化や勉強、そして仕事の生産性を上げることが出来るというのが、著者の主張である。
凡人の私は、いずれAIが自立的に思考するようになり、人に対して何かを仕出かすのではないかなどと考えてしまう。つまり、汎用人工知能3/である。その研究は進んでいるが、未だ実現していない。それはまさに映画「マトリックス」の世界となるが、そんな未来はちょっと恐ろしい気もする。
1/
Artificial
Intelligence
2/
Flipped
Classroom
3/
Artificial
General Intelligence (AGI)